転送しないと殺されるチェーンメール

ここ数日で,あるチェーンメールが爆発的な流行を見せているようです.ぼくはチェーンメールについての相談をメールで受け付けているのですが,日曜日から数えて 150 件を越えるメールが来ました.1 月は 20 件未満だったのですから,突発的な大流行という感じです.ぼくの所にメールで相談を寄せた人は,小学生から社会人まで幅広い年齢層に分布していますが,特に中学生からが多いように感じました.

そのチェーンメールの内容は:
殺人犯探しを暴力団に依頼している.
暴力団は犯人に関しての情報を探していて事件内容と連絡先を書いた配布し,受信者に 10 人への転送を強要している.
転送しなかった場合は暴力団の人が殺しにくる.

たしかに,不気味なメールを受け取り,指示に従わなければ殺すと脅されれば不安になるでしょう.でも,そのような悪意のあるメールを他の人に転送すれば,受け取った人もとても嫌な気持ちになるのです.本当にそんなものを転送してしまってよいのでしょうか?

2006 年 2 月 20 日ごろから大流行したチェンメールについて静岡新聞の Web サイトで記事になっていました.

静岡新聞から一部を引用します:

「このメールを10人に回さないと暴力団組員に殺される」などと記されたチェーンメールが県内の若者や子どもの携帯電話に送信されるケースが相次いでいることが21日までの県警生活安全企画課の調べで分かった。県警は「不安感をあおる悪質ないたずら。届いても無視して、他人に転送しないでほしい」と注意を呼び掛けている。

引用終わり.

従来の類似のチェーンメールでは,殺人犯を捜していて,メールの転送を止めたら犯人だとして殺すという話でしたが,今回は犯人でもなんでもないだろうけど,協力しない人はどんどん殺しますっていう訳です.

暴力団という,なんだか分からないけどすごそうな組織が関連していると書いてある事,具体的に連絡先として電話番号や住所が書いてあること,そしてメールの転送を追跡して個人情報を管理する機械の説明で型番まで示しているところが,「本当かもしれない」と思わせる要因なのでしょうか.

まず,チェーンメールの発信元が,転送先を追跡してだれにチェーンメールが届いたのか,それが転送されたのかを把握する事はできません.不可能です.どんな組織のどんなすばらしい機械でもできません.

たとえば 10 人に転送しろと指示されたチェーンメールがあったとしましょう.1 時間で 10 人に転送したとします.

今の日本の総人口は 1 億 3 千万人までは届きません.皆が転送したら 8 時間後には全国民がこのメールを受け取ることになります.なにかしら新しい技術が取り入れられたとしても,チェーンメールをきちんと追跡して行くというのは,数千万人が一斉にメールを送るのをすべて追跡するというような問題であって,とても難しい問題です.しかも,チェーンメールを転送しなかった人を割り出して,なにかしらの行動を起こすのは不可能だと言いきってよいと思います.

ですから,チェーンメールを転送しなかったら,誰かがあなたに危害を加えるとか,なにかしらの代金の請求をするなんてことはあり得ないのです.

チェーンメールについてもう一度考えてみましょう.

あなたが転送したチェーンメールは受け取った人はどのように感じるでしょうか?
殺されるなんて脅しの入ったメッセージを受け取れば,きっと嫌な気持ちになりますよね.
あなたが転送しなかったら,チェーンメールの発信元にわかるのでしょうか?
不可能です.チェーンメールの発信元は,あなたにチェーンメールが届いたのかどうかさえ確認できません.
このチェーンメールは本当でしょうか?
もし本当の事が含まれているとしても転送しては行けません.あなたにチェーンメールが届いたのかどうかをチェーンメールの発信元は確認できないのですから,転送しなかったら殺しに行くなんていう事が書いてあれば,嘘であることは間違いありません.

このような説明をされても,やっぱり不安だという人もいるでしょう.個別に相談を受け付けているので,メールしてください.

その時にルールがあります:

あなたは誰ですか?
あなたのなまえを教えてください.仮名,ペンネーム,ニックネームのようなものでかまいません.
あなたは中学生ですか? 高校生ですか? それとも...
およその年齢,もしくは生徒/学生の場合は学年を教えてください.
どんな事でお困りですか?
相談したい内容について,簡単に説明してください.たとえば,このようなチェーンメールを受け取って困っていますとか.チェーンメールの内容も教えてください.チェーンメールの全文をこちらに転送していただいても大丈夫です.
あて先
おのひろき
onohiroki@cup.com

すぐにはお返事できないかもしれません.

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